芥川賞を上に重ねて店員に渡した。

日記です。

 

10時ごろに起きて、風呂場と一緒になった洗面台で顔を洗い、手の感覚だけでつまみをシャワーに切り替え、腰を曲げ、足元が濡れないよう浴槽へと水を零しながら、髪を濡らした。ここへ越してからずっと使っているタオルで雑に拭くと、古い雑巾のようなツンとした臭いが鼻から離れず、やいやい言いながら手で顔を擦った。厚手だと乾かすのが難しい。

 

支度を済ませ、先週末、寝坊して行きそびれた美容院へと向かう支度を始める。

電車で一駅先のところにあるので移動時間に退屈はしないのだが、何か本を読みたいなと思い、ずっとトイレの隅で立てかけたままにしていた、伊坂幸太郎の文庫本のことを思い出し、黒色が褪せたショルダーバッグに詰めて家を出た。

駅についても次の電車までしばらく時間があったので、それを読む。エッセイ本なので語り口調の文体で、眼を上下に動かしながら、右から左へ進んでいくその作業がとても気楽だった。

 

予約の時間より30分近く駅についたので、近くにある商店街を歩いた。

数年前にアニメの舞台として使われたことから、この街はいつからか至る所で美少女が目に留まるようになった。町おこしとして取り組んだことで聖地巡礼の旅行者が増えたが、外見に気を遣わない人らが跋扈している現状は、正直複雑な気持ちである。

本屋が目に留まった。中に入るとまた美少女と目が合う。Youtubeの間で入る、どれも似たようなcmのようで、すぐにスキップボタンを押すように本へと視線を逃がした。

逃がした先にあった、派手なポップと大量に平積みされた一冊の本を手に取りながら、その内容を確認する。芥川賞を受賞し、なんと出身がこの街らしい。それでここだけ盛り上がっているのだなと合点がいった。

買うか悩みつつ、手に持ったまま店内を廻ると、芸人が執筆した本が置かれたコーナーで足を止めた。くりぃむしちゅーの上田が本を出したようで、先程とは打って変わり、迷わず買うことを決めた。私は芸人のエッセイ本がとにかく好きだ。お笑いが好きだけど活字を読むのが苦手な私にとって、これほど読みやすくて興味を掻き立てられる本はないからだ。

こんなこと書くのは恥ずかしいが(この日記自体気取ってて恥ずかしいが)、ツッコミ芸人の一言でバシッ!と笑いと流れを掴み取るパワーがたまらなく好きで、どんな思考回路をしているのだろうと気になり読んだことがきっかけだ。南海キャンディーズの山ちゃんが出している本は特に面白かった。あれは自伝に近いけど。

だが、芥川賞と上田の本を持ってレジへ向かう時、上田の顔を隠すように芥川賞を上に重ねて店員に渡した。深い理由はないけど、咄嗟に出た見栄張りだと思う。上田さんごめんなさい。

 

丁度いい時間つぶしになったので、美容院へ。

大したことも起きずにカットとカラーが終わった。綺麗に染まったので嬉しい。次は青色を強めにしたカラーに挑戦してみたい。

 

家に帰ってきて、芥川賞の本を先程読み終わった。自分には持ち得ない価値観で、読んだ後に脳みそが新たな世界をインストールしたような鋭さがあった。

いろんな創作物って代理体験っていうのかな?自分の性格では体験できないこととか考え方があって面白いよね

 

お金の使い方についてなんとなく考える。

今日買った本も、美容院の料金も、コンビニスイーツも、究極までそぎ落としたら娯楽に分類されてしまうんだろうな。でもそれだと生きるだけになっちゃうしな~。娯楽に使うお金が多すぎるんだろうな。わたくし。もうちょっと節約します。